谷口吉生による挑戦
豊田市美術館は、かって挙母城(ころもじょう)のあった童子山の高台の一角に1995年に開館した美術館です。歴史ある森と池水でつながったミステリアスで静謐な空間の中に、水平・垂直なフォルムの極上な美術館が佇んでいました。
豊田市美術館の特徴
美術館の立地
本丸跡に整備された豊田市美術館は、木々に覆われた丘の上に立つ美術館であり、アプローチは自然豊かな空間となっており、そこを通り抜けることで「日常から非日常へ」と徐々に気持ちがきりかわっていきます。
東側玄関
外観・庭園・アプローチ
建築家谷口吉生氏は設計する建築を敷地という条件から発想しています。豊田市美術館では城跡の丘の高低差を活かし、一番下の地階レベルを職員の出入り口と搬入口、一階を来館者の正面玄関へのアプローチ、二階を池と庭園としています。そして、昔からの古い豊田の町に面する西側の正面玄関、新しい豊田の町の景観を見下ろすような位置にある東側玄関を東西軸でテラスで結び垂直関係にある南北方向に長く、南から企画展示室、常設展示室、高橋節郎館が独立性をもちながら、統一性のある配置で並べています。
駐車場からの屈曲したアプローチを進むと、その全貌が開けてきます。そこは丘の上の高低差を活かして配され、乳白色のガラスと緑のスレートでできた直方体が浮かび上がります。ランドスケープはピーター・ウォーカーによる芝生と砂利による市松模様が配されています。
石畳と大階段・池の護岸カーブ壁、丸池のリング石護岸は和泉屋石材店(香川県高松市)和泉正敏氏が製作しています。
壁面の緑のスレートは米国バーモンド州産の粘板岩が採用されています。この緑色は色や形が主張しすぎず展示作品と喧嘩しないことより使われました。また、この粘板岩は劣化せず、使っているうちに緑色が濃くなり、深みがでることで乳白色のガラスや樹木と混じり合ってさらに絶妙なバランスとなっていきます。
光のシークエンス
室内の光の変化の順序
- 天井の低い落ち着いたエントランス
- 光のあふれる吹き抜け階段
- 多種多様な明るさを持つ展示室
- 光あふれる吹き抜けに戻る
- 外部の明るい彫刻テラス
エントランス
展示室
テラス
展示室
豊田市美術館では実施設計の段階から谷口吉生氏にヴィジョンを伝え、どのような展示室、導線にすべきかを課題の中心にすえて議論していきました。
ホワイトキューブの展示室であるが、谷口吉生氏の提案で部屋によっては天窓から自然光の入る広い吹抜け空間や壁面の半分がガラスとなった柔らかく均質な光が入る空間などそれぞれに特徴をもった展示室で構成されています。
展示物を様々な角度から見えるように階段が設置された展示室は、通路からも室内全体を見渡せることができ、平面だけではなく立体的な空間となっています。それぞれの展示室は個性的であるが、どのような作品も許容してくれます。それは、作家たちに作品の魅力をどのようにすれば最大限に感じてもらえるか挑戦させている部屋となっています。
建物と池
谷口吉生氏は「池があると人と建物との距離を保つことができ、水が間にあることで、その先に行けないがその向こうを見通すことができる。季節や天候、時間の変化を水は映してくれる。水は全体的な平面でランドスケープに水平線を引くことができる。豊田市美術館ではどうやって空を映すのかなどを考え、水深を意識し底の浅い池にしている。」と池の効果について語っています。
建物に並行している池底の帯模様
(デザインはピーター・ウォーカー)
光と影
美術館建築の想い
豊田市美術館は、谷口吉生氏のこれらの想いをみごとに実現させた美術館です。非日常を感じさせる長大な門、整然としたアプローチ空間、様々な動きのある内部空間や光の変化など、谷口吉生氏ならではの細部にまでこだわった美術館を体験することができます。