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資生堂アートハウスの魅力を探る

建築家谷口吉生による資生堂アートハウス

谷口吉生経歴

金沢市立玉川図書館

金沢市立玉川図書館

1937年 東京生まれ(父は建築家谷口吉郎)
1960年 慶應義塾大学工学部機械工学科卒業
 ハーバード大学デザイン大学院建築学専攻
1964年 Master of Architectureを取得
1965年 丹下健三都市・建築研究所勤務
1975年 髙宮眞介と計画・設計工房を設立
1975年 雪々谷の家
1976年 福井相互銀行成和支店

1978年 金沢市立玉川図書館(父吉郎と共作)

1978年 資生堂アートハウス

アメリカのハーバード大学では最新のモダニズム、東京大学の丹下健三研究室では建築を単体とではなく、都市環境を意識するデザインを学んだ。また父の谷口吉郎氏は、国立博物館東洋館や東宮御所を設計し、モダニズムと和風を融合させた。ベタな日本風の表現は一切ないが、父の方向性を継承した日本らしさを感じさせる洗練されたモダニズム建築が特徴であり美術館の名手とも呼ばれています。
 

資生堂アートハウス

化粧品メーカーの資生堂は、1975年静岡県掛川市に工場を建設。その3年後、主に戦後に備蓄された美術コレクションや自社香水瓶、企業資料一般を収集・展示するためとして美術館がつくられました。
コレクションは、資生堂が主催してきた「椿会」(1947年~)、「現代工藝店」(1975年~1995年)、「工藝を我らに」(2015年~2023年)などで発表された絵画、工芸、彫刻が中心となっています。

後に谷口吉生氏が語ったところによると、当初の依頼は自社資料などを入れる蔵庫的なものであったが、設計が進むうちに博物館のようなデザインになっていった。それを見た資生堂の顧問で美術評論家であった今泉篤男氏が「これはなかなかいいじゃないか。やろう」となり、具体的検討にすすんでいった。そして、上から見ると資生堂のSとも見えることもあり、社内でもOKとなり資生堂アートハウスとなったそうです。

 
資生堂アートハウス図面

独立して間もない「計画・設計工房」が、資生堂アートハウスで世間を驚かせる美術館をつくりあげた。

 

建物外観

東海道新幹線に沿った研究所の広々とした土地であり、コンセプトを「通過する新幹線が美しく映える」とし、円と正方形を並べて、そのふたつの形の相互作用によって空間を生み出しています。
資生堂アートハウス

アプローチからは、人工的につくられた芝生の丘により建物の半分が埋められているため、建物全体を見ることができなくなっており、建物が円と正方形の組み合わせである幾何学であることを意識することはない。また、裏庭の彫刻の庭に出ることもできないため屋外から建物を見ることは限られており、内部から外部を見るための建築になっています。

資生堂アートハウス

外観はラスター釉タイル、ミラーガラスそしてステンレスの目地で仕上げられており、それらすべての材料が同一平面上に納まる単純なディテールと意匠となっており、凹凸のない平滑面、無彩色の材料、ヒューマンスケールを省略し、反ポストモダン的建築となっています。
谷口吉生氏は、この敷地に設計する話をいただいた時、敷地のすぐ横を走る新幹線に乗り、静岡ー浜松間を何度も往復し、どのように見せるかを徹底的に考えたそうです。

資生堂アートハウス

新幹線をイメージした流線型のカタチ上にあるミラーガラスには新幹線が映ってます。そして、ステンレスであるが曲線的な形と滑らかな動きによって柔らかい物体のように見える伊藤隆道氏によるオブジェ「5月のリング」が配置されています。

室内

この美術館は、円形と正方形の幾何学の組み合わせによって平面プランが構成されているシンプルな建物です。このシンプルな組み合わせの空間が、展示を見学する人々の流れを上手くつくりだしています。
展示室に入るには、半円形の黒い階段が設けられており、このわずか数段の階段を上ることで自然と気持ちが切り替わります。

四角形の展示室

緩やかなスロープでゆっくり上り、やや暗くなった展示室に向かうことで作品への期待感が徐々に高まっていきます。

建築家谷口吉生による資生堂アートハウス

正面入口にある半円反面の黒い階段

建築家谷口吉生による資生堂アートハウス

四角形の展示スペースに向かうスロープ

建築家谷口吉生による資生堂アートハウスの正方形の展示室
こちらの展示室では東京銀座の資生堂ギャラリーで開催されてきた「椿会美術展」の絵画作品などが展示されています。四角形の展示室へはスロープで徐々に上り、階段で下りたりする高低差が巧みにつくられています。
建築家谷口吉生による資生堂アートハウス展示室

2階展示室から下りる階段

建築家谷口吉生による資生堂アートハウス展示室

2階に上るスロープと狭くなった出口

建築家谷口吉生による資生堂アートハウス展示室

自然光が取り入れられた室内へ続く

展示室の突き当りの階段で、展示作品の世界から現実の世界に意識を引き戻され、1階の展示作品を新たな気持ちで見ることとなります。そして、1階の展示室の出口は円形の中庭を囲む壁により狭くなっており、狭くなった出口は外からの自然光が差し込んでいます。

円形の展示室

資生堂アートハウス円形の展示室

円形の展示室には、連続する窓によって自然光を室内に上手く取り入れ、建物の内外の関係を錯綜させながら、展示に必要な空間の明暗をつくりだし、狭いながらも多様な空間を体感できるように演出されています。
主役である展示品の邪魔をすることなく、シンプルであり、かつ居心地の良い空間がつくられていました。

谷口吉生の原点

資生堂アートハウス

資生堂アートハウスは、その設計の素晴らしさから当初求められていた施設から大きく変貌し美術館としてつくられました。美術館としてのデビュー作である資生堂アートハウスには、谷口建築の特徴である装飾性の排除された垂直と水平が際立つシンプルなモダニズム建築となっていました。
谷口吉生氏は語っています「エレベーション(立面)は抽象へ、コンセプチュアルへと志向していった。それは内からはメタリックな曲面、モビールの彫刻、疾走する白い車体とすべて流体の印象であり、新幹線の窓からは、ただ銀色の一閃である」

Yoshio Taniguhi

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